リハビリテーションとはなにか?

リハビリテーションとは、リハビリテーションという言葉の意味にヒントがあります。語源はラテン語で、re(再び)+ habilis(適した)から派生したと言われており、「再び適した状態にする」という意味です。「再び権利を回復する」という意味もあります。

また、単なる機能回復ではなく「人間らしく生きる権利の回復」や、「自分らしく生きること」が重要であり、そのために行われるすべての活動がリハビリテーションです。

リハビリの効果と目的とは?

ゴムチューブでリハビリする女性と理学療法士

病気や事故などで損なわれた心身の機能や能力、家庭や社会における役割などを、再び適切な状態に回復することがリハビリテーションの目的です。

「当たり前にできていたこと」あるいは「努力した結果できていたこと」に再びチャレンジして、もう一度できるようになることを目指すことになります。

これは辛い現実と向き合うことになるかもしれませんが、新たな自分と向き合い受け入れていくという、リハビリにはとても必要な第一歩となります。

リハビリで得られる身体的なメリット

どのような病気や事故によってリハビリを受けることになったのかはさまざまです。そのため身体的なメリットは状況により異なりますが、関節の可動域、筋力、運動や感覚の麻痺など……現状を確認しながら、必要な機能や能力の向上を着実に行うことができます。

医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、リハビリテーションの専門家から必要な運動や動作を正しく教わることができることもメリットと言えます。

リハビリで得られる精神的メリット

身体的なメリットと同様に、どのような病気や事故によってリハビリを受けることになったかによって異なりますが、現状を確認しながら損なわれた機能や能力を、リハビリによって段階的に再獲得していくことが、精神的なメリットです。

必要な動作や運動などを日々、くりかえし行いながらステップアップしていきますので、根気や忍耐が養われます。再びできるようになった達成感や、健康が当たり前ではないという「日常に対する感謝」を感じる方も多いので、リハビリには様々なメリットがあると言えます。

リハビリの進め方|実際どのように進めていくの?

問診をする介護士とシニア

まずは、リハビリを必要とする方の現状を把握することから始まります。現状把握をするために、以下のような検査を行います(専門用語で「評価」といいます)。

  • 基本動作の検査(関節の可動域、筋力、知覚・運動覚、起き上がる、座る、立ち上がる、歩くなど)
  • 日常生活動作の検査(ご飯を食べる、トイレに行く、家事をする)

どの身体機能や能力の回復が必要なのかを把握した上で、最終的な目標設定をご本人と専門職で決定、共有します。

その目標に向けてリハビリプラン(リハビリテーション計画)を医師や理学療法士などの専門職が立て、リハビリに臨むご本人とご家族への説明と同意を得てからリハビリを行います。

大まかには以下のような評価と実際のリハビリの繰り返しとなります。

評価(事前評価)→  リハビリ →  評価(中間評価)→   リハビリ→   評価(最終評価・目標達成)

※病院などの医療機関でリハビリを行う場合は、担当の医師からのリハビリテーション指示書に基づいて、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門職が、必要なリハビリを行うことが一般的です。

リハビリプランは重要!まさに登山計画

登山をする男性のイメージ

リハビリプラン(リハビリテーション計画)の重要性は、「登頂が困難な山にチャレンジするための登山計画」と考えるとわかりやすいです。 

  • リハビリが必要な人 = 初登山する人
  • 登山ガイド = リハビリ専門職
  • リハビリプラン = 登山計画

安全に登頂し下山するためには、以下のような登山計画が必要になります。

  • 登山者の能力、性格的な傾向の把握など
  • 必要な道具の選定
  • 登山時間の予測
  • 登山のルート設定
  • 段階的な目標設定
  • 危険の予測と対応

上記のような計画が全くない場合、目的地に到達できる可能性は大きく損なわれてしまうでしょう。

リハビリプランも、病気や事故などで損なわれた心身の機能や能力のみならず、家庭や社会における役割などをいかに回復していくか、その結果を大きく左右する重要な存在であると言えます。

リハビリを中断した場合のリスクを知ろう

リハビリの中断に至る理由はさまざまですが、中断によって生じるリスクは事前にご紹介します。仮に、リハビリテーションが必要な状態を放置すると、どうなるのでしょうか?

リハビリの中断の理由としてよくあるのは、リハビリ中に別の病気や事故が生じてやむを得ず中断となる場合です。生命の維持の優先が大原則ですから、リハビリが再び行える状態になるまで安静、療養することになります。

リハビリを中断せざるを得ない病気や事故がなくても、意欲の低下など精神的な問題でリハビリの中断に至る場合もあります。

いずれの場合もリハビリプランが中断しますので、心身の回復や目標の到達に遅れが出る可能性は高くなります。

リハビリを継続するための2つのポイント

散歩する車椅子に乗った高齢者と介護士

リハビリを継続するための重要なポイントは2つです。

  1. 楽観的な言動を意識する
  2. 長期目標と短期目標を決める

1.楽観的な言動を意識する

20世紀前半に活躍したイギリスの政治家 ウィンストン・チャーチル氏が残した言葉で、以下のような言葉があります。

「悲観主義者はすべての好機の中に困難を見つけるが、楽観主義者はすべての困難の中に好機を見出す」

リハビリテーションは、病気や事故などで損なわれた心身の機能や能力、家庭や社会での役割を再び回復させるための困難な道のりであることが多いです。

リハビリ専門職として多くの方に関わらせていただいた経験から、リハビリを意欲的に継続し、見事に回復されていく方々には“困難の中に好機を見出す楽観主義者”であるという共通点があります。

ぜひ楽観的な言動を、意識していただければと思います。

2.長期目標と短期目標を決める

リハビリを継続させるためには、目標の立て方にポイントがあります。

まずは最終的な大きな目標(長期目標)を明確にします。その後、最終的な大きな目標に至るまでに必要な小さな目標を設定します。

短期目標があるからこそ、「達成できた!」という喜びを味わえます。これこそ継続の意欲につながり、まるで階段を一歩ずつ着実に登るように、リハビリを意欲的、効果的に継続するポイントとなります。

家族介護者、介護家族のあなたへ

花畑で車椅子に乗った女性と車椅子を押す女性

リハビリテーションや長期の療養、介護が必要な方にとってご家族や介護者の存在は大きな心の支えとなります。先の見えないリハビリや療養、介護となる場合はご本人も辛いですが、それを支えるご家族や介護者の心身の疲労も相当なものになります。

より良い介護を継続するためには、あえて「全力で走らない」ことも重要です。たとえば、

  • 無理せず心身の休息を充分にとる
  • 気分転換を意識的に行う
  • 楽観的な言動を意識する
  • 困った時は複数の専門家に相談する
  • 色々なサービスや制度があるので専門家に聴いたり、調べて必要に応じて利用する

など…ご自分だけ大変な思いをせず、ご自分の心身も生活も大切にして、楽観的に介護に臨んでいただければと思います。

 最後に

どのような分野でもそうですが、専門家の一言は、それがまるで正解であり、他に方法がないかのような縛りを与えてしまうことがあります。ですが方法は、他にも存在する場合が多いです。

 リハビリテーションにおいても、「自分自身がどうしたいのか。」「どうなれば今より嬉しいのか。」をぜひ考えていただき、遠慮なく専門家に伝えてくださいね。

 じつは「歩きたい」と強く希望する患者さんがいらっしゃいました。担当医からは「歩くのは無理だ」と言われていたのですが、なんとか担当医を説得して、慎重にリハビリを継続していきました。

途中何度も、担当医に「歩くのは無理だ」と言われましたが、リハビリ開始から約三ヶ月後に歩行器を使用して立ち上がり、歩けるまでに回復された方がいらっしゃいます。

 リハビリテーションにおいても、ご自身の希望を伝えることは、とても重要なことです。遠慮なく担当の専門家に伝えてくださいね。