木製建具は、住まいにやさしい雰囲気と落ち着きをプラスする人気のアイテムです。天然素材ならではの質感や香りが魅力ですが、素材の選び方やサイズ、デザインによって、仕上がりや使い勝手が大きく変わります。

この記事では、専門家のアドバイスをもとに、初めて木製建具を注文する人でも失敗しないためのポイントをわかりやすく解説します。長く使い続けるためのポイントもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

木製建具とは?

木製建具とは、木材を使って作られるドアや引戸、障子戸、襖戸など、空間を仕切ったり開閉したりするための建具のことです。まず始めに、木製建具の特徴と主な種類について解説します。

木製建具の特徴

木製建具の最大の特徴は、自然素材ならではの温もりと質感です。木は呼吸する素材であり、湿度を調整してくれるため、季節を通して快適な空間を保ちます。また、杉や桧などの国産材は香りがよく、心を落ち着かせる効果もあります。加工の自由度が高く、和風・洋風どちらのインテリアにも調和しやすいのも魅力です。デザインや木目の個性を生かせば、世界にひとつだけの建具が出来上がります。

木製建具の主な種類

木製建具には、用途やデザインによってさまざまな種類があります。代表的なものを紹介します。

開き戸

最も一般的な建具で、洋室や玄関などに多く使われます。デザインの自由度が高く、ガラス入りタイプや框(かまち)戸など、空間の雰囲気に合わせたアレンジが可能です。

引戸

横にスライドして開閉する建具で、和室や廊下など限られたスペースに最適。片引き戸・引違い戸・襖戸・障子戸など種類も豊富です。

折れ戸

クローゼットや収納スペースに使われることが多く、開閉スペースを最小限にできるのが特徴です。

吊り戸

レールを上部に設置し、床に段差を作らないタイプ。バリアフリー設計に向いており、スムーズな開閉が可能です。

ルーバー戸・ガラリ戸

通気性を重視した建具で、玄関や洗面所などの湿気がこもりやすい場所におすすめです。羽板の角度によって風と光の入り方を調整できます。

オーダー前に知っておくべきこと

木製の片引き戸を近くから捉えた写真。シンプルな木目と取手のないミニマルデザインが特徴。

建具をオーダーする前に、目的・素材・予算などをきちんと整理しておくことが大切です。思い描いた仕上がりを実現するために、以下の点を確認しておきましょう。

予算を決める際の注意点

木製建具をオーダーする際は、最初に予算を決めておくことが大切です。価格は木材の種類や金具、デザインの複雑さ、塗装方法によって大きく変わります。たとえば、桧やタモなど高級材を使えば高額になり、杉材などを選べばコストを抑えられます。また、多くの場合、採寸や取付、塗装といった工事費も別途必要です。見積もり時には費用の内訳を確認し、納期やデザインとのバランスを考慮しながら、無理のない範囲で理想の建具を実現できるようにしましょう。

目的に合った建具の種類

建具は「仕切る」「光を通す」「風を通す」など、用途によって最適な種類が異なります。まずは設置場所と目的を明確にし、障子戸・襖戸・ドア・引戸・ルーバー戸などから最も適したタイプを選びましょう。

使用する場所に適した素材の選び方

木製建具に使われる木材には「広葉樹」と「針葉樹」があります。なかでも、柔らかく加工しやすい針葉樹が広く使用されています。ただし、種類によって硬さや耐久性、水への強さが異なるため、設置場所に応じて選ぶことが大切です。

室内用には、色味や香り、木目の美しさを重視するとよいでしょう。日本産の杉や桧、ヒバなどは香りがよく、抗菌性も高いため、障子戸や襖戸に最適です。これらの木材は空間に温もりを与え、自然な質感を楽しめます。

屋外用には、雨や紫外線に強い素材が適しています。米杉、オーク、ピーラー、米桧、タモ、米ヒバ、米松などの外材は耐候性に優れ、塗装を施すことでより長持ちします。なお、近年はウッドショックの影響で輸入木材価格が高騰し、流通も不安定なため、早めに業者へ相談しておくとよいでしょう。

使用する場所に合わせて素材を選べば、見た目の美しさだけでなく、耐久性や快適性も長く保てます。

木製建具オーダーの流れ

木目が美しい両開きの室内ドアの写真。ガラススリットが入り、モダンで温かみのあるデザイン。

木製建具のオーダーは、ヒアリングから納品までの流れを理解しておくことでスムーズに進みます。以下で、オーダーの流れを4つのステップに分けてわかりやすく解説します。

1. 設置場所やデザインのヒアリング

オーダー建具の最初のステップは、職人との「ヒアリング」です。

建具は、設置場所や使用目的によって最適な形や仕様が異なるため、この段階でしっかり希望を伝えることが大切です。

たとえば、和室なら障子戸や襖戸、洋室なら開き戸や折れ戸など、空間に合わせて選ぶデザインが変わります。

「光を多く取り入れたい」「風通しを良くしたい」といった要望があれば、ガラスやアクリル板、ルーバー付きデザインを提案してもらうことも可能です。

また、設置する場所(屋内か屋外か)によって使う木材の種類や塗装方法も異なります。具体的な設置環境や使い方のイメージを職人に伝えることで、見た目だけでなく、機能面でも長く使える建具に仕上がります。

2. 木材・金具の選定

デザインが固まったら、次に行うのが木材と金具の選定です。建具に使われる木材は主に針葉樹ですが、種類ごとに特徴があります。

室内用には、香りや木目の美しい杉・桧・ヒバなどが人気です。抗菌作用があり、やさしい雰囲気を演出します。屋外用には、雨や湿気に強い米杉・オーク・ピーラー・米桧などが適しています。

さらに、金具もデザイン性と機能性のバランスを考慮して選びます。引戸のレールや吊り戸の金具、取っ手の形状など、細部まで丁寧に決めることが納得のいくオーダーのコツです。

3. 図面の作成と見積もり

木材や金具の選定が終わったら、職人が図面を作成する工程です。この図面には、寸法・デザイン・仕様・使用素材などの詳細が記載され、実際の仕上がりイメージを確認できます。

その後、図面に基づいた内容で見積書が提出されます。価格は、材料費+金具代+製作時間+経費で構成され、選ぶ木材やデザインの複雑さによって変動するのが一般的です。見積もりの段階で予算や納期の希望をしっかり伝えておくと、後々のトラブルを防げます。

4. 製作・納品

図面と見積もりの最終確認を終えたら、いよいよ製作工程に入ります。一つひとつの建具は、職人の手によって丁寧に加工され、組み立てられます。木の繊維の向きや含水率など、素材の個性を見極めながらつくられるため、世界に一つだけのオーダーメイド品に仕上がります。

製作期間は一般的に2週間〜1か月程度が目安で、デザインの複雑さや塗装の工程によっては、さらに時間がかかる場合もあります。完成後は、現場での納品・設置作業が行われ、開閉の動作確認や仕上がりチェックを経て引き渡しとなります。

納品後は、設置環境に合わせたメンテナンス方法を職人に確認しておくと安心です。

木製建具を長く使うためのコツ

明るい和室に設置された小ぶりの引き違い障子の写真。シンプルな木枠と障子紙が清潔感のある印象を与える。

木製建具は、丁寧に手入れをすれば何十年も使い続けられる、長寿命のインテリアです。ここでは、長く美しく使うためのお手入れのポイントを紹介します。

ワックスや塗料で保護する

屋内建具の多くは、白木のまま未塗装で仕上げられるのが一般的です。手垢が付くのを防ぎたい場合は、木工用のワックスやオスモなどの自然塗料を薄く塗るとよいでしょう。塗りムラを防ぐため、柔らかい布で薄く均一に伸ばすのがポイントです。3〜5年を目安に再塗装を行えば、美しさを保ちながら耐久性も高まります。

屋外用には、防腐剤入りの塗料や耐候性の高い自然塗料を使い、年1回程度の塗り替えを習慣にするとよいでしょう。特に日当たりや風雨が強い場所では塗膜の劣化が早いため、注意が必要です。色あせやひび割れを見つけたら、早めに再塗装を行うのが長持ちのコツです。

日常のお手入れ

木製建具は、日々のちょっとしたお手入れで、美しさと機能を長く保てます。建具にほこりをためないように、柔らかい布で定期的に乾拭きを行いましょう。汚れが気になる場合は、ぬるま湯に中性洗剤を少量溶かし、かたく絞った布でやさしく拭くのがおすすめです。拭いたあとはすぐに乾拭きし、水分を残さないようにします。

また、直射日光や過度な湿気は木の反りや変色の原因となるため、カーテンや風通しの工夫で環境を整えることも大切です。ドアを強く閉めるなどの衝撃を避け、丁寧に扱うことで建具の寿命が延びます。

オーダー建具は職人が一つひとつ丁寧に仕上げているため、時間が経っても表面を軽く磨いたり再塗装したりすれば、新品のような風合いを取り戻せます。小さな手間を重ねることが、長く愛用するための秘訣です。

お気に入りの木製建具で心地よい暮らしを

木製建具は、自然素材ならではの温もりと機能性を併せ持つ魅力的なアイテムです。オーダー前に「設置場所・素材・サイズ・デザイン」を整理し、職人と丁寧に相談することで、理想の一枚が形になります。設置後もこまめにお手入れを続ければ、年月とともに風合いが深まり、より愛着のある建具へと育っていくでしょう。お気に入りの木製建具とともに、心地よい空間を末永く楽しんでみてください。