はじめに
「お店のあのトロけるチャーシューを家で再現したい」。鍵は部位選びと火入れ、そしてタレ(煮汁)の扱いです。プロは継ぎ足しのタレを寝かせ、弱い沸騰以下の温度帯で長時間かけて火を入れます。家庭でも道具と手順を最適化すれば、皮付きバラのぷるっとした脂も、肩ロースのしっとり赤身も、驚くほど上質に仕上がります。
目次
- チャーシューの特徴:皮付きバラが“とろぷる”になる理由
- プロと家庭の違い:継ぎ足しダレと温度管理
- 失敗しない火入れの基準:縮ませない・固くしない
- 部位の選び方:皮付きバラ/肩ロースの使い分け
- よくある失敗と対処法
- 保存と衛生:旨味を保つコツ
- おすすめの道具:圧力鍋・温度計・タコ糸
- 味を底上げする下ごしらえとタレ設計
- 基本レシピ:王道“巻きバラ”&圧力鍋の時短レシピ
- ラーメン以外の活用アイデア
- FAQ
- まとめ
チャーシューの特徴:皮付きバラが“とろぷる”になる理由
ラーメン用チャーシューの王道は豚バラ(皮付き)。皮〜脂〜赤身の三層構造が、長時間の火入れでコラーゲン化し、とろける口当たりに変わります。皮が付くことで煮崩れ防止とゼラチン由来のコクが加わり、スープとの相性が一段と高まります。
プロと家庭の違い:継ぎ足しダレと温度管理
お店は3時間前後の弱火でじっくり煮込み、使ったタレを煮沸→濾して継ぎ足し、旨味を積み重ねます。家庭では継ぎ足しが難しくても、毎回しっかり煮沸・濾過すれば十分再現可能。
もう一つの差は温度管理。グラグラ煮立てるとたんぱく質が締まり、縮み・硬化・肉汁流出の三重苦に。**80〜90℃の“微沸騰未満”**を保つのが理想です。
失敗しない火入れの基準:縮ませない・固くしない
- 中心温度の目安:68〜70℃で“しっとり”。これ以上は急に乾きやすくなります。
- 鍋の火加減:鍋底から“ポコッ”と気泡が時々上がる弱〜中弱火。
- 確認:30分おきに上下を返し、表面だけが沸点に触れないように。
- 漬け過ぎ回避:タレは濃縮が進むほど塩分が強く感じます。長時間の“漬けっぱなし”はしょっぱくなりやすいので注意。
部位の選び方:皮付きバラ/肩ロースの使い分け
- 皮付きバラ:ゼラチン豊富。トロ・ぷる・艶が欲しい人向け。巻きやすく、見栄えも良い。
- 肩ロース:赤身主体で肉の旨味が濃い。脂が苦手な人や丼・サンドにも万能。
どちらもネットまたはタコ糸で成形すると均一に火が通り、薄切りでも崩れません。
よくある失敗と対処法
- 固い/縮んだ:火が強すぎ。温度計で80〜90℃をキープ。中心温度が上がり切ったら火を落として余熱で仕上げる。
- しょっぱい:タレ濃度が上がったまま長時間漬けた。煮汁を水・酒で割る or タレから出して常温で粗熱→冷蔵で休ませる。
- 崩れる:成形不足。タコ糸を指1本入る強さで“のの字”に。皮付きは皮目に浅く切り込みを入れると反り返りにくい。
- 匂い:下茹で→流水で洗う→焼き付けの順で臭みを抜く。
保存と衛生:旨味を保つコツ
- 冷蔵:煮汁ごと密閉容器で3〜4日。空気に触れさせないほうがぱさつき防止。
- 冷凍:可能だが食感は落ちやすい。どうしても冷凍するならスライス+煮汁少量ごとに小分け。解凍は冷蔵庫で一晩。
- 急冷:煮上がりは袋に煮汁ごと入れて氷水で急冷。旨味流出と劣化を抑えます。
- タレ再利用:必ず沸騰1〜2分→濾過→冷却。清潔な容器で冷蔵。継ぎ足す場合も毎回煮沸が前提です。
おすすめの道具:圧力鍋・温度計・タコ糸
- 圧力鍋:短時間でホロホロ。時間がない日でも“店レベル”に近づきます。
- 温度計:中心温度と湯温を見える化。失敗が激減。
- タコ糸/チャーシューネット:成形と煮崩れ防止。薄切りが映えます。
- 厚手鍋:鋳物や多層鍋は温度が安定。
味を底上げする下ごしらえとタレ設計

- 下茹で(湯通し):3〜5分で灰汁と血を抜き、流水でぬめりを落とす。
- 焼き付け:表面を香ばしくしてタレの乗りを良くする。皮は強めに焼いてOK。
- タレの基本比率(目安)
しょうゆ:酒:みりん:水=2:2:1.5:3+砂糖(大さじ2〜3)
生姜・にんにく・長ねぎ青い部分、八角(好みで)を少量。香りは入れすぎないのが上品に仕上げるコツ。
基本レシピ:王道“巻きバラ”&圧力鍋の時短レシピ
A. 王道・巻き皮付きバラのしっとりチャーシュー(鍋:2.5〜3時間)
材料(作りやすい量)
- 豚バラ(皮付き)約1kg(厚みを合わせ、巻いてのの字に)
- タコ糸/ネット 適量
- サラダ油 少々
タレ
- しょうゆ200ml、酒200ml、みりん150ml、水300ml
- 砂糖(または氷砂糖)40g
- 長ねぎの青い部分 1〜2本分/生姜スライス10g/にんにく2片/八角1個(好み)
手順
- 成形:肉を巻いてタコ糸で均一に縛る。皮目に浅い格子の切り込みを入れると反り返り防止。
- 下茹で→洗い:沸騰湯で3〜5分。取り出して流水で汚れを落とす。
- 焼き付け:鍋に油。全面をしっかり焼いて香ばしさを付ける。
- 煮る:タレ材料を入れ、弱〜中弱火で80〜90℃をキープ。落とし蓋+フタ少しずらしで2.5〜3時間。30分おきに上下を返す。
- 目安:**中心68〜70℃**で火入れ完了。
- 急冷:煮汁ごと袋へ移し、氷水で急冷→粗熱が取れたら冷蔵で一晩。
- 仕上げ:冷えた状態でスライス(薄切りは冷えていると綺麗)。提供直前に煮汁で温め戻し or フライパンで軽く炙る。
ポイント
- タレは煮詰まると濃くなる。水 or 酒で都度調整して“しょっぱ過ぎ”を回避。
- 煮汁は濾して脱脂し、ラーメン用の**返し(タレ)**として再利用できる。
B. 圧力鍋の時短チャーシュー(加圧25〜30分+自然放置)
材料:上と同じ(タレの水は200ml程度に減量)
手順の違い
- 下茹で→焼き付けまでは同じ。
- タレを入れ高圧で25〜30分、火を止めて自然放置。
- フタを開けたら煮汁で味を調整し、同様に急冷→冷蔵で休ませてからスライス。
仕上がり:ホロッと崩れる柔らかさ。皮付きはゼラチン感しっかり。
ラーメン以外の活用アイデア
- チャーシュー丼:温かいご飯にタレを少量垂らし、刻みネギ+卵黄。
- 角煮風リメイク:厚切りにして別鍋でタレ+水少量で再度ゆっくり煮含める。
- 炒飯:細かく刻んで炒め油の代わりにチャーシュー脂を使用。
- おつまみ:黒胡椒と粒マスタード、柚子こしょうで。
- サンド/バインミー:甘辛タレ×香草が好相性。
FAQ
Q. タレに長時間漬けると美味しくなりますか?
A. しょっぱくなりやすいので漬け過ぎNG。煮上げ→休ませる→提供前に軽くタレで温め直す方が上品です。
Q. 皮付きバラの下処理は?
A. 下茹で→焼き付けで臭みと余分な脂を落とし、皮は強めに焼いて香ばしさを。
Q. 冷凍するとパサつく?
A. しやすいです。やむを得ず冷凍するなら薄切り+煮汁少量ごとに小分けして、冷蔵解凍が無難。
Q. 八角の量の目安は?
A. 1kgに1個まで。入れ過ぎると“薬っぽい”風味に。苦手なら入れない選択でOK。
Q. 継ぎ足しダレは家で安全?
A. 毎回必ず煮沸→濾過し、清潔容器で冷蔵。長期保存は避け、使い切りベースが安心です。
まとめ
- 皮付きバラはぷるっ、肩ロースはしっとり——用途で使い分け。
- 成功の分岐点は温度管理(80〜90℃)と中心温度(68〜70℃)。
- タレは煮詰まり=塩分上昇に注意。継ぎ足すなら煮沸・濾過が前提。
- 仕上げは急冷→一晩休ませ、薄く美しくスライス。
今日作って、明日はラーメン、明後日は丼。“家チャーシュー”が生活のご馳走になります。