自然治癒力(しぜんちゆりょく)という言葉をご存じでしょうか?人間や動物の心身全体が生まれながらにして持っている「ケガや病気を治す力や機能」を広く指します。手術や人工的な薬物を使わずに治る能力を指すこともありますが、実際はどのようなものなのでしょうか?

自然治癒力とは?

自然とは「おのずからそうなっているさま。天然のままで人為の加わらないさま。人類の力を超えた力を示す森羅万象。」などの意味があります。ですので自然治癒力とは「おのずと治癒していく力、人の力を超える治癒力」という意味になります。

例えば風邪を引いて休息により回復するという経験は誰もが経験したことがあると思いますが、この時、身体の中でどのようなことが起こっているのでしょうか。

風邪症状が生じた原因の1つである、ウイルスや細菌の活動を抑えるために免疫機能が働き、一時的に高熱となりウイルスや細菌を死滅させ、せきや鼻水、痰などによって体外へ排出しようとする現象が起こります。

身体はウイルス、細菌との対峙と身体を元の状態に戻すための活動に集中するために、倦怠感や頭痛、体調を崩したという凹んだ気持ちを生じさせて、身体的、精神的活動を制限するために休息を促します。

簡単に書いていますが、体内では生きていくために必要な活動が安定して営めるように、綿密な調整が自然に行われています。体温や心拍、呼吸数、血圧など生命活動を調度良い状態に保とうとする働き。この働きは無意識のレベルで、死ぬまで一瞬も休むことなく常に行われています(生命の恒常性)。

まさしく、人間が常に恵みを享受している大自然のように、身体の中にも自然が広がっているということになります。

自然治癒力のメカニズム

若い男女が青空の下、木のそばで両腕を広げてリラックスしている様子。二人ともカジュアルなスポーツウェアを着ている。

自然治癒力は、自然に働いています。つまり、私たちが意識しようが無意識であろうが自動的に休まず働いてくれています。

特に生命維持に密接に関係する自律神経(交感神経、副交感神経)による心拍動の調整や血管の収縮・弛緩、呼吸、体温の維持、内臓の活動、各種ホルモンや神経伝達物質の放出・抑制など。これらは人の意識に一切任されていない(随意的にコントロールを任されていない)ということが、自然治癒力のメカニズムにおける重要な特徴であると言えます。

自然治癒力を高めるためには?

自然治癒力を高めるためには、身体の外にある大自然の巡りに調和して、身体の中の自然(六臓六腑など)がうまく循環するような行動と環境作りが大切です。

  • 心身を大麻(精麻)で祓い清める(日本独自の神道の教えにある大自然と身体の中の自然を調和させる方法です。心と身体の目に見えないホコリを掃除するようなイメージです)
  • あらゆる生命活動を支える大自然に感謝し、時によく観察し、時に触れ合う
  • 常に休まず働いてくれている自分の心と身体を尊重して感謝する(常に働いてくれていますので週に3日ほどなるべく身体に負荷をかけないように色々と意識的にサボります)
  • 自分にも他者にも嘘をつかない(心理的、肉体的ストレスが過度にならないようにする)
  • 暴飲暴食しない(私は何を食しても良いと考えていますが、度を超えず、腹八分辺りを意識します)
  • ゆっくり寝る(できれば最低6〜8時間。自然と起きるべき時間の前に目が醒めるような睡眠がよいです)
  • 自分に合った水を摂取する(水は生命の源泉です。心身が喜ぶ水を日頃から使うようにしています)
  • 適度な運動を行う(私は一日に何度も深呼吸します。加えて愛犬の散歩と、折に触れ軽いエクササイズを行います)
  • 気の合う家族、尊敬できる人、友人、ペットと楽しく過ごす
  • 寝る時はアーシング(除電)する(日々、パソコンやスマホ、電化製品の恩恵を受けていますので、知らず知らずのうちに身体に電気が帯電しています。寝る場所だけは自然治癒力の回復を阻害する要因の一つである、人工的な電気が身体を覆わないような環境作りをしています)

他にもたくさんありますが、意識的にコントロールできない自然治癒力の働きを想像して、どうすれば自然治癒力が気持ちよく発揮できるかを考えてみるといいかもしれません。

食事や栄養素について

家族がダイニングテーブルで楽しく食事をしている様子。背景にはキッチンがあり、祖父母が微笑みながら見守っている。

食事や栄養素は、個人の体質によって異なるため、同じものを摂っても合うかどうかは個人差があります。例えば、同じ量のお酒を飲んでも、人によってアルコールの影響は異なります。

食事や栄養素を摂取する際は、自分の体の自然治癒力を考慮して、必要なものを選ぶことが大切です。具体的にどのような食事や栄養素が適しているかは、専門家に相談することをおすすめします。自然治癒力を大切にするために、食事や栄養素を選ぶ際には身体の自然治癒力の立場になって考え、効果効能が発揮されると思って摂取するとよいでしょう。

コクンッと飲み込んでからは常に働いてくれている自然治癒力に全て丸投げです。この先、食べ物や栄養素を消化吸収、排泄してくれるのですが、消化吸収にどれほどの化学反応が体内で起こっているか想像したことはありますでしょうか?

消化吸収の過程に分解という作業がありますがそれはもう、とてつもない作業(とんでもない化学反応の連続)です。この過程では酵素が大量に必要になりますが、必要な酵素を程よく含んだ食事は意識できていますか?いくら健康に良いと評判の食事や栄養素であっても、自然治癒力が必要としないものであったなら、自然治癒力に余計な仕事をさせて無駄に疲弊させてしまうということになります。

知らず知らずのうちにこのようなことを繰り返して、大切な自然治癒力を疲弊させてしまっている人が非常に多くいらっしゃいます。自然治癒力を大切にするために、酵素の役割を理解し、適切な食事や健康補助食品を取り入れることが重要になります。ご自身の自然治癒力をブラック企業のような過酷な労働や環境に無意識にさらしていないか、意識してみてくださいね。

運動について

自然治癒力を高めるのには適度な運動をおすすめします。種類や頻度も人によって異なりますが、多くの人に共通して必要な気軽に行えるエクササイズを紹介します。

・首の伸展(空をしっかり見上げる姿勢)
・腰の伸展(膝を伸ばしたまま)
・股関節の伸展(膝を伸ばしたまま)
※立った姿勢で行ってください 

人体の仕組み上、どうしてもスマホやパソコンの操作、長時間の椅子座位などで首や肩、腰、股関節を前方に曲げる動作が多いです。縮こまった屈筋群を立ち上がるたびにゆっくり、しっかり3〜5回伸ばしてください。

じっとしているのに痛い場合や、特定の動きで痛みが出る場合は専門家の診断を受けてくださいね。

自然治癒力と現代医学的治療法について

医師が患者の背中を優しく触れて診察している様子。医師の手が患者の肩に置かれ、背景には緑の植物が見える。

人間の体内には、自然のバランスが存在しています。自然治癒力は、このバランスを保ちながら回復する能力を指します。

しかし、現代医学は科学的なアプローチで人為的な方法を用いて治療を行います。これには救急医学、外科手術、再生医療、画像診断、薬学などが含まれます。現代医学は、自然治癒力を補完し、早期回復を促す役割を果たしています。

これらの方法は、一時的には効果的であることがありますが、過度に頼りすぎると体内の自然なバランスが崩れ、自然治癒力が低下する可能性があります。

また、現代医学の介入が必要な場合もあります。例えば、眼鏡やコンタクトレンズで視力を補う、補聴器で聴力を補う、人工関節置換術で股関節や膝関節を治療するなど、自然治癒力だけでは不十分な場合があるのも事実です。

自然治癒力のみでは救われなかった生命が現代医学の叡智と技術によって繋ぎとめられるようになりました。自然治癒力を補助、回復、改良するために現代医学はとても重要な役割を果たしています。

しかし、下記のような状況では、まず現代医学の診断と処置を迷わず受けてください。

・生命に危険がある状況
・自然治癒力では回復が追いつかない負傷(骨折や脱臼、大きな怪我など)
・原因不明の不調

生命の危機を脱してから自然治癒力の回復に努められるとよいでしょう。

自然治癒力を妨げる要因

ここでは東洋医学(中医学)の自然治癒力を妨げる要因を紹介します。

外因(外邪):環境的ストレス

風、暑さ(熱)、火、湿気、乾燥、寒さ
これらの気候に関する邪を六淫(りくいん)とも呼びます。現代医学でも風邪(かぜ)と診断されることがありますが、風により細菌やウイルスが体内に入ることを東洋医学では風邪(ふうじゃ)と呼びます。

内因:心理的ストレス

怒り、喜び(慢心)、思い、憂い、恐怖、悲しみ、驚き
七情(しちじょう)とも呼ばれますが、これらの感情が過度になり続けるときのことです。

不内外因(ふないがいいん):社会的ストレス

飲食物の質や量、労働や休息の過不足、生活の質、突発的な事故や負傷などのことを指します。

現代においてもさまざまなストレスがあります。適度なストレスは生きる原動力の一つになりますが、ストレスの過不足は自然治癒力を妨げる要因となります。

自然療法の種類

五行説の図。木、火、土、金、水の五つの要素がそれぞれの季節、色、味、感情、臓器に関連付けられて示されている。

東洋医学で用いられる理論から考えてみます。陰陽五行論という言葉はご存知の方が多いと思いますが、古代中国で誕生した大自然の原理原則で今もなお、暦や年中行事、仏教や神道、東洋医学、占術など身近に用いられています。

全ての事象は、陰と陽、木、火、土、金、水の五つの気(五行)の相互関係で構成されています。五行もそれぞれ陰と陽の性質に分類されます。

例えば、身体の場合は、
六臓:肝(木の陰)、心(火の陰)、脾(土の陰)、肺(金の陰)、腎(水の陰)、心包(火の陰)
六腑:胆(木の陽)、小腸(火の陽)、胃(土の陽)、大腸(金の陽)、膀胱(水の陽)、三焦(火の陽)
五臓六腑という言葉の方が耳馴染みがあるかと思いますが、正確には六臓六腑です。

このように、身体も陰陽五行の気で構成されていますので身体にも自然が広がると考えるわけです。
前置きが長くなりましたが、以下、自然療法を紹介します。

  • 薬草療法(木の陰のエネルギー)
  • 森林浴(木の陽のエネルギー)
  • 温熱療法(火の陰のエネルギー)
  • 日光浴(火の陽のエネルギー)
  • 農業療法(土の陰のエネルギー)
  • ハイキング(土の陽のエネルギー)
  • 月光浴、貴金属によるオシャレ(金の陰のエネルギー)
  • 鍼治療、刃物を使った料理や創作(金の陽のエネルギー)
  • シャワー、プール(水の陰のエネルギー)
  • 海水浴、瀧行(水の陽のエネルギー)

身近な温泉は、火(火の陰)+ 水(水の陰)が組み合わさって温泉療法となります。
お灸は、もぐさ(木の陰) + 火(火の陰)を組み合わせた温熱療法です。

まだまだたくさんの自然療法があります。

心身の陰陽五行を調和させるために大自然の陰陽五行の気(エネルギー)を利用させてもらい、季節の旬の食べ物を食して身体の陰陽五行の気の過不足を調和させようと試みる食養生も自然療法の一つですね。みなさんも探してみてください。