はじめに
「今の家に住み続けながら資金をつくりたい」。そんなニーズに応える選択肢がリースバックです。自宅をいったん売却し、買主(事業者)と賃貸契約を結んで住み続ける仕組み。老後資金や事業資金、老人ホーム入居待ちの“つなぎ”として活用が広がる一方、**価格のディスカウント・賃料負担・契約タイプ(普通借家/定期借家)**など、見落とすと後悔しやすい論点もあります。国土交通省もガイドブックを公表し、留意点を具体事例で整理しています。本記事では、仕組み→比較→流れ→チェックポイントの順で初めての方にもわかりやすく解説します。 国土交通省+1
目次
- リースバックの基本:住みながら売るってどういうこと?
- なぜ利用が増えている?背景と最新動向
- メリットとデメリット:良い面・悪い面を同じ土俵で比較
- リバースモーゲージとの違い:どちらが向いている?
- 契約の流れ:査定から決済・引渡し後の賃貸まで
- 業者選びのコツ:信頼性を見極めるチェックリスト
- 契約条件の要チェック項目:買戻し・賃料・契約タイプほか
- 失敗を避ける実践アドバイス
- FAQ
- まとめ
リースバックの基本:住みながら売るってどういうこと?
リースバックとは、所有する自宅をリースバック事業者に売却し、その事業者と同じ住宅の賃貸借契約を結ぶことで、家賃を払いながら住み続ける取引です。
- 売却でまとまった資金を確保
- 引っ越し不要で生活を継続
- 将来、条件次第で**買い戻し(オプション)**が設定されるケースもあり
制度のポイントや注意点は、国土交通省の**「住宅のリースバックに関するガイドブック」に整理されています。はじめて検討する方は、まず全体像とリスク**を把握しましょう。 国土交通省+1
なぜ利用が増えている?背景と最新動向
- 政策後押し:2021年の**住生活基本計画(全国計画)**で「健全なリースバックの普及」が明記。22年には前述ガイドブックを公表し、消費者の理解促進が進みました。 国土交通省
- ニーズ:高齢化による老後資金の形成、老人ホーム入居待ちの暫定活用、事業資金や教育費の確保など、多様な使い道。
- 留意点:相談件数は増加傾向で、条件理解不足に起因するトラブルも。最新の実態調査でも課題抽出が進められています。 最新不動産ニュースサイト「R.E.port」東京都宅建協会 全宅保証協会東京本部
メリットとデメリット:良い面・悪い面を同じ土俵で比較
メリット
- 現金化が早い:一般仲介よりスピード売却になりやすい
- 住み続けられる:引越し費用・手間を抑え、生活を継続
- 資金使途が自由:老後資金・事業資金・借換え・相続対策の原資などに柔軟活用
- 買戻しの選択肢:条件付きで将来の買戻しができるプランも(※有無と条件は必ず事前確認)
デメリット(重要)
- 売却価格はディスカウント:事業者のリスク・保有コストを織り込むため、一般市場価格より低くなるのが通常
- 家賃負担が継続:長期で見れば売却代金以上の賃料を支払う可能性
- 契約タイプの影響:定期借家だと期間満了で退去の可能性。普通借家でも賃料改定条項等の影響に注意
- 所有権は手放す:固定資産税の負担は原則オーナー側に移るが、あなたは原状回復責任や契約上の義務を負う
- 第三者への転売リスク:所有者が変わっても通常は賃貸借が承継されるが、契約期間・更新条件・賃料改定条項は新オーナーの運用方針の影響を受け得る(契約文言の精査が肝)
国交省ガイドブックもメリットとトラブル事例を具体的に掲載。**「良い面だけ」**で判断しないことが重要です。 国土交通省
リバースモーゲージとの違い:どちらが向いている?
観点 | リースバック | リバースモーゲージ |
---|---|---|
仕組み | 売却+賃貸。家賃を払って住み続ける | 自宅を担保に借入。生前は利息中心を返済、死亡時等に清算 |
所有権 | 事業者へ移転 | 自分に残る(担保設定) |
維持費 | 家賃を継続負担 | 金利・管理費・固定資産税等を継続負担 |
清算 | ー | 将来の売却価格<残債のリスク(商品により保険・上限設定あり) |
向き | 引越し回避・早期現金化を重視 | 所有権維持や税制・公的商品(例:機構系)の枠組み活用 |
どちらも資金計画と長期居住の見通しがカギ。家計収支(家賃/金利)・寿命リスク・家族の同意まで含めて総合判断しましょう。国のガイドも参照を。 国土交通省
契約の流れ:査定から決済・引渡し後の賃貸まで
- 相談・ヒアリング:資金使途・希望家賃・居住期間の希望を共有
- 物件査定:相場・建物状態・賃貸想定から買取価格と想定家賃を提示
- 条件調整:契約類型(普通/定期)・期間・賃料改定・買戻し条件を文書で詰める
- 売買契約・決済:所有権移転・代金受領・抵当権抹消等
- 賃貸借契約締結・引渡し:以降は借主として家賃を支払う
準備書類の例:本人確認書類、登記識別情報(権利証)、印鑑証明書、住民票、固定資産税関係書類、ローン残高証明、管理規約・使用細則(マンション) ほか
契約書・重説(重要事項説明)で期間・更新・中途解約・原状回復・違約金を明確化。口頭の約束は必ず書面化します。 国土交通省
業者選びのコツ:信頼性を見極めるチェックリスト
- 実績・開示:成約事例・平均ディスカウント率・想定利回り等、数値根拠を開示できる
- 見積の透明性:買取価格・賃料設定・諸費用の内訳が明瞭
- 契約ドラフトの事前提示:売買+賃貸を同時に確認できるか
- 第三者転売時の取り扱い:賃貸借の承継・賃料改定条項の説明が具体的
- 買戻し条件:価格の算定式・期限・手数料が明文化
- 説明責任:メリットだけでなくトラブル事例と回避策を先回りして説明
- 外部ガイドの提示:国交省ガイド等公的資料への案内がある(“急かさない”姿勢) 国土交通省+1

契約条件の要チェック項目:買戻し・賃料・契約タイプほか
1) 契約タイプ(超重要)
- 普通借家:期間満了でも原則継続。賃料改定条項の有無・根拠に注意
- 定期借家:期間満了で確実に終了。再契約の可否・再契約料・賃料水準を事前把握
2) 賃料の算定と改定
- 近隣相場・利回りからなぜその家賃なのかの説明を文書で
- 改定トリガー(地価・金利・税負担)と頻度、上限/下限があるか
3) 買戻しオプション
- 価格の算定式(固定/相場連動/残債+手数料方式)
- 期限(〇年以内・〇か月前予告)と違約金
- リフォーム・損耗が買戻し価格に与える影響
4) 転売・所有者変更時
- 賃貸借承継の明記、条件据置きに関する取り決めの可否
- 「定期借家+短期契約」は退去リスクが高いので要注意
5) 費用・税
- 売却時の譲渡所得課税(特例の適用可否)
- 賃貸中の原状回復・火災保険・共益費の負担区分
これらはガイドブックでも代表的なトラブル論点として整理。書面・根拠・期限を揃え、後日の齟齬を防ぎます。 国土交通省
失敗を避ける実践アドバイス
- 相見積もり:最低2〜3社で買取価格・賃料・契約タイプを横並び比較
- キャッシュフロー検証:家賃×想定居住年数で総負担を試算(「売却代金>総家賃?」をチェック)
- 第三者の目:ファイナンシャルプランナー/弁護士に契約前のリーガル・家計面ダブルチェック
- 急かす業者はNG:即決特典や当日限りを強調する提案は避け、公的ガイドで内容確認を。 国土交通省
FAQ
Q. リースバック後、家賃は上がりますか?
A. 改定条項があれば上がる可能性があります。相場連動・金利・税など条件と頻度を明記しましょう。
Q. 将来、買い戻せますか?
A. 買戻し条項がある場合のみ。価格の算定式・期限・手数料を事前に書面で合意。相場次第で買えなくなるケースも。 ツギノジダイ
Q. 所有者が変わると住めなくなりますか?
A. 通常は賃貸借が承継されます。ただし定期借家は期間満了で終了、賃料改定条項の影響も受けます。契約文言を精査。
Q. 老後資金の観点では逆モーゲージとどちらが有利?
A. 所有権維持や公的商品の活用を重視するなら逆モーゲージ、早期現金化・引越し回避ならリースバックが候補。家計と家族事情で選択。 国土交通省
Q. どこで公的情報を確認できますか?
A. 国土交通省の**「住宅のリースバックに関するガイドブック」**がわかりやすく整理。トラブル事例とチェックポイントが載っています。 国土交通省
まとめ
- リースバックは売却+賃貸の複合契約。価格ディスカウントと家賃負担、契約タイプを正しく理解するのが肝。
- 買戻し・賃料改定・転売時の扱いは契約文言が全て。相見積もり+専門家チェックで“想定外”を潰す。
- まずは国のガイドで全体像と注意点を押さえ、急かす業者とは契約しない。 国土交通省