Cookieとは、ユーザーがウェブサイトを訪問した際に一時的に入力した情報やユーザーの情報等を保管する仕組みのことです。個人情報を保護する目的からCookieを規制する動きが強まっていますが、ユーザーにもサイト運営側にもメリットがあることはご存知でしょうか。

今回は初心者にもわかりやすいようにCookie規制の影響と対策について解説していきます。最後まで読んで、参考にしてください。

Cookie規制の目的とは?

Cookie規制の主な目的は、インターネットユーザーのプライバシーを守ることです。

従来、多くの企業はCookieを使って、ユーザーの閲覧履歴、購買行動、個人の趣味嗜好などの情報を、ユーザーが十分に理解しないまま収集しており、時に第三者に販売されたり、ユーザーの意図しない形で広告targeting等に利用されたりしていました。

具体的に防ぎたい問題として次のようなものがあります。

  1.  過度な個人情報の収集
  • ユーザーの同意なしでの行動追跡
  • 必要以上の個人データの蓄積
  1. データの不適切な利用
  • 収集した情報の無断販売
  • プロファイリングによる差別的取扱い
  • 意図しない形でのターゲティング広告
  1. セキュリティリスク
  •  個人情報の漏洩
  • なりすましや不正アクセス

また、Cookie規制により企業はデータ収集時のユーザー同意取得、収集目的の明確な説明、必要最小限のデータ収集、適切なデータ管理と保護が求められるようになりました。

つまり、Cookie規制は「ユーザーの知らないところで個人情報が利用される」という事態を防ぎ、インターネット利用における透明性と安全性を確保するためのものです。

ファーストパーティーCookieとサードパーティーCookieの比較

「情報」と書かれた紙がパソコンのキーボードの上に置かれ、鎖と南京錠でロックされている。情報セキュリティやデータ保護の概念を表現したイメージ。

ファーストパーティーCookieとサードパーティーCookieの違いを、買い物の例でわかりやすく説明していきます。

ファーストパーティーCookie

ファーストパーティーCookieは、あなたが直接訪れたお店(ウェブサイト)が使用するCookieです。例えば、ECサイトでショッピングカートに商品を入れたり、ログイン状態を保持したり言語設定を記憶したりするために使用されます。

サードパーティCookie

サードパーティーCookieは、別のお店や会社(第三者)が設置するCookieです。例えば、あなたがA社のECサイトを見た後に、B社のニュースサイトで「先ほど見ていた商品の広告」が表示される場合、これはサードパーティーCookieによって実現されています。広告配信会社が複数のウェブサイトをまたいであなたの行動を追跡し、興味・関心に基づいた広告を表示するために使用されているのです。

このように、ファーストパーティーCookieは主にウェブサイトの基本的な機能を提供するために必要不可欠なものである一方、サードパーティーCookieは主にマーケティングや広告目的で使用され、プライバシーの観点から規制の対象となっています。

日本と海外のCookie規制の現状

日本では、Cookie単体は個人情報として扱われず、比較的緩やかな規制となっています。しかし、Cookieで収集した情報を氏名やメールアドレスなどと紐付けて個人を特定できる場合は、個人情報保護法の対象となります。この場合、利用目的の通知や公表、データの安全管理などが求められますが、明示的な同意取得までは必須とされていません。

一方、EUのGDPRは世界で最も厳格な規制として知られています。Cookieの使用前に必ず利用者から明示的な同意を得る必要があり、同意を得ない状態でのデータ収集は禁止されています。また、データの利用目的や保存期間、第三者提供の有無などを詳細に説明する必要があります。

アメリカでは連邦法による統一的な規制はなく、州ごとに異なります。特にカリフォルニア州のCCPAは厳格で、消費者への通知義務や個人情報の販売に関するオプトアウト権の付与が必要です。

Cookie規制導入後の変化

キーボードの上に置かれた南京錠と鍵のセット。サイバーセキュリティやデータ保護を象徴するイメージ。

Cookie規制の導入により最も顕著な変化は、ターゲティング広告の精度低下です。以前は、ユーザーの詳細な行動履歴を基に興味関心に合った広告を配信できましたが、サードパーティーCookieの制限により、ユーザーの行動追跡が困難になりました。特に、異なるウェブサイト間での行動追跡ができなくなり、リターゲティング広告の効果が大幅に低下しています。

また、コンバージョン測定の精度低下も問題です。ユーザーが広告をクリックしてから購入までの流れを正確に追跡することが難しくなり広告効果の測定が不正確になっています。

Cookie規制強化の理由

Cookie規制が強化されたのはなぜでしょうか。

リクナビ問題では、就活生の同意を得ずに、スコア算出のために内定辞退率のデータを企業に販売していました。これは学生の将来に影響を与える重要な個人情報を、本人に知らせることなく商業利用していた事例です。この問題により、個人データの利用には明確な説明と同意が必要だという認識が日本でも広まりました。

Googleへの制裁は、主にプライバシーポリシーの不明確さが問題視されました。ユーザーデータの収集・利用方法が分かりにくく説明されており、実質的な「同意」が得られていないと判断されました。特にEUでは、位置情報やブラウジング履歴の過度な収集が問題となりました。

Metaは、WhatsAppやInstagramなどのサービス間でのデータ連携や、過度なターゲティング広告への利用が問題視されました。ユーザーが意図しない形でのデータ利用や、選択の余地がない同意取得方法が批判されています。

Cookie規制に対応するための対策

最優先で取り組むべきは、GA4(Google Analytics 4)への移行です。GA4は規制に対応した設計で、Cookieへの依存度を下げ、機械学習を活用した予測分析が可能です。特にユーザーIDやイベントベースの計測を重視しており、デバイスをまたいだユーザー行動の把握にも対応しています。

次に、ファーストパーティーデータの活用強化です。具体的には会員登録やニュースレター購読など、ユーザーが自発的に提供するデータの収集を促進します。これらのデータは、顧客との直接的な関係に基づいているため、規制の影響を受けにくく、より正確なマーケティング施策が可能です。

また、従来のブラウザ側での計測ではなくサーバー側で直接データを収集することで、より安定した計測が可能になります。

これらの対策は段階的に導入し定期的に効果を検証しながら調整することが望ましいです。

 Cookieの同意取得で気をつけるべき点とは

Cookieの同意取得について、最も重要なのは「透明性」と「分かりやすさ」です。

同意取得のポップアップは、ページ表示時に適切なサイズで表示し、簡潔な言葉で目的を説明し、ユーザーが自分の意思で選べるようにします。

また、設定画面へのアクセスを分かりやすい場所に配置し、いつでも設定を変更しやすいようにします。

今後のCookie規制と広告技術の展望

Cookieに代わる技術として、GoogleのプライバシーサンドボックスAppleのSKAdNetworkブラウザフィンガープリンティングなどが注目されています。

また、プライバシーを重視した新しいマーケティング手法の開発も必要です。例えば、コンテンツマーケティングやSNSを活用したコミュニティマーケティングなど、直接的な関係構築を重視した施策が重要になってくるでしょう。

Cookie規制のポイントを押さえて対策しよう

Cookie規制は、個人情報を守りながらユーザーに適した広告をしてくれるとても便利なものです。今後もプライバシーの観点から、さらにCookie規制が厳しくなるといわれているため、しっかりとポイントを押さえて対策していくことが重要です。