福祉車両の購入を検討しているけれど、「一般の車と何が違うの?」「どう選べばよいか分からない」と感じていませんか?
介護が必要な方や障がいのある方の移動を支える福祉車両は、使用する人の身体の状態や介助の有無によって選び方が大きく変わります。しかし、装備の違いや助成制度などが複雑で、初めての購入で迷ってしまう方も少なくありません。
この記事では、専門家のアドバイスをもとに、福祉車両の特徴や選び方のポイント、購入前に確認すべき点まで、初心者にもわかりやすく解説します。後悔しない購入のための情報をお届けしますので、福祉車両の購入を検討している方はぜひ最後までお読みください。
福祉車両とは?一般車両との違い
福祉車両は、移動に配慮が必要な方のために特別な設備が備えられた車です。ここでは、福祉車両の基本的な役割や、一般車両との違いを解説します。
福祉車両の種類と特徴
福祉車両は、利用者の身体の状態や使用目的に応じて「自操式」と「介護式」の2種類に分けられます。見た目は一般車両とほとんど変わらない車もありますが、天井が高くなっていたり、後部のバンパーが動くなど、外観に違いがある車両も存在します。
自操式は、身体に障がいのある方が自分で運転するための車です。車両には、車いすから運転席へ移りやすいように座席が回転する機能がついていたり、手で操作できるアクセルやブレーキ、ウィンカーなどの装置が取り付けられています。また、車いすを車内に積み込めるような収納スペースが確保されているなど、安心して運転できるようにさまざまな工夫が施されています。
一方、介護式は、介助者が車いすに乗ったままの利用者を乗せ降ろしがしやすいように配慮された車です。スロープやリフトを使ってスムーズに乗り降りできるほか、車いすをしっかりと固定する装置や、専用のシートベルトが装備されています。乗る人と介助する人の負担を軽減し、安全で使いやすい設計になっています。
一般車両との主な違い(乗降・設備)
一般車両と福祉車両の大きな違いは、乗り降りのしやすさと、安全に乗車できる装置があるかどうかです。一般車両では、乗る人が自分の力でシートに座ることを前提として作られているため、特別な補助装置はついていません。そのため、車いすを利用する方や介助が必要な方にとっては、乗り降りや移動が大きな負担になってしまいます。
福祉車両には、こうした負担を減らすための装備が充実しています。車いすごと乗り込めるスロープやリフト、車いす固定装置、専用のシートベルトなどを搭載。電動式スロープや、車いすに乗ったまま引き上げる電動ウィンチなど、介助者の負担を軽減する工夫が施された車両もあります。
福祉車両を選ぶときに押さえたいポイント

この章では、福祉車両を選ぶときに抑えておきたいポイントについて解説します。あらかじめ知っておくと、自分のニーズに合った車を選びやすくなります。
利用する人の状態に合った車種選び
多くの福祉車両は、既存の車両(ベース車両)をもとに、必要な装備を取り付ける方式が一般的です。
個人が使用する場合は、車いすのサイズや同乗者の人数を考え、ベース車両を決めていきます。法人で使用する場合は、一度に送迎する人数や道路状況、運転者の免許条件なども考慮する必要があります。利用する人の状態は一人ひとり違います。車両の改造コストを最小限にするためにも、ベース車両の慎重な選択が必要です。
基本的には国産・外車問わず多くの車種への改造が可能です。しかし、法人でも個人でも、福祉車両として選べる4WDやハイブリッド車、電気自動車の種類は多くありません。このようなタイプの車を希望する場合は、選択肢が少ないことを理解しておきましょう。
よく使われる機能の例(スロープ、リフトなど)
福祉車両によく使われる機能を紹介します。メーカーや車種によって、標準装備とオプション装備の違いがあります。
スロープ
スロープは、車いすに乗ったまま車に乗り降りできるようにするための装置です。主に軽自動車やミニバンなどに搭載されており、手動で展開するタイプと、リモコンなどで自動展開できる電動タイプがあります。
電動ウィンチ
スロープ搭載車の多くには、電動ウィンチが取り付けられています。電動ウィンチは、車いすに乗ったままの利用者を電動で引き上げる装置で、安全で効率的な乗車が可能です。
リフト
大型車では、リフトを搭載しているケースが多くあります。リフトは車体の横や後部から電動で昇降し、車いすに乗ったまま持ち上げて車内に入れられる装置です。乗降時の体勢移動が不要で、利用者と介助者の負担を大きく軽減できます。
車いす固定装置
どのタイプの福祉車両にも共通して搭載されているのが車いす固定装置です。車いす固定装置は、車内で車いすが動いたり倒れたりするのを防ぐための装置で、安全性の確保に欠かせません。固定方法には手動式と電動式があり、前後で固定するのが一般的です。
また、車いすをしっかり固定し、専用のシートベルトを使うことで、安全基準を満たした座席として扱われることがあります。
購入時に知っておきたい費用と補助制度

ここでは、福祉車両を購入する前に知っておきたい費用の目安や、利用できる助成金・減税制度について詳しく解説します。
車両価格の目安と維持費
福祉車両の価格は、新車か中古車かによって大きく異なります。中古車には比較的安価なものもありますが、福祉車両は価格が下がりにくいため、年式が古くても割高になる傾向があります。
維持費は、基本的には一般車と大きな差はありません。スロープやリフトなどの福祉架装部分は法定点検の対象外となるため、車検時でも点検していない整備工場がほとんどです。福祉車両は修理費用が高額になることもあるため、対応できる専門の整備工場で定期的に点検を受けることをおすすめします。
自動車保険については、福祉車両を対象とした割引制度を設けている保険会社が多く、保険料を抑えられる可能性があります。保険の加入を検討する際は、割引制度の有無について事前に確認しておくと良いでしょう。
利用できる助成金・減税制度の概要
福祉車両を購入する際に利用できる助成金や減税制度は、自治体によって内容が異なり、ほとんどの場合で事前申請が必要です。申請のタイミングを逃すと助成や減免を受けられないため、購入前に必ず確認しましょう。
代表的な制度には、自動車税や消費税の減免、車両改造費への助成などがあります。支給の可否や金額は、障がい者手帳の等級や世帯収入、各自治体の運用方針によって異なります。
減税制度の一例としては、社会福祉法人が使用する際の「用途減免」、障がい者本人の使用による「手帳減免」、福祉仕様で設計された車両に適用される「構造減免」などがあります。
また、自動車税や環境性能割の減免は県税に分類されるため、減免額や申請時期(事前・事後)は都道府県によって異なります。詳細は、居住地の自動車税センターで確認しましょう。
さらに、障がいのある方が自ら運転するための車両改造を行う場合、一定の条件を満たせば購入時の消費税が非課税となる制度もあります。ただし、この制度を十分に理解していない販売店もあるため、制度の有無や申請手続きについては、利用者自身で確認しておくことが大切です。
試乗・購入前にチェックしておきたいこと

購入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、試乗時や購入前に確認しておきたいポイントを紹介します。
福祉車両に詳しい販売店か
福祉車両を購入する際は、福祉車両の取り扱いや整備に詳しい販売店を選ぶことが非常に重要です。スロープやリフトなどの福祉架装(福祉用の特別な装置)部分は、道路運送車両法に基づく法定点検の対象外であり、車検時にも点検が義務づけられていません。そのため、通常の整備工場では福祉架装部分の点検をせずに販売されるケースもあります。福祉車両を安全・快適に使い続けるには、購入時にしっかりと設備の動作確認や安全チェックを行ってくれる販売店を選ぶことが大切です。
福祉車両に詳しい販売店であれば、助成金や減税制度に関する複雑な手続きについても安心して任せられます。さらに、利用者の将来の身体状況も考慮し、長く使える車両を総合的に提案してくれるため、購入後も安心です。
長く使用できる車両か
福祉車両を購入する際は、利用者の将来の身体状況も考慮する必要があります。現在の身体状況だけで福祉車両を選ぶと、数年後に必要な機能が使えなかったり、改造が難しいなどの問題が出ることがあります。特に高齢者介護の場合は身体機能が大きく変化しやすい傾向があります。福祉車両を長く使用するためには、福祉車両や介護、障害のことを十分に理解した専門家からアドバイスをもらうと良いでしょう。
操作のしやすさ・乗り降りの確認
試乗時は一般車と同様の走行確認に加え、福祉架装部分が安全かつ正常に動作するかどうかをチェックします。
- 異音やオイル漏れがないか
- スロープやリフトがスムーズに作動するか
- 車いすの乗り降りがスムーズにできるか
- 車いす固定が容易か
- 介助者が操作しやすいか
- 実際の車いすとサイズや高さが合うか
以上のような点を確認しておくと安心です。試乗する際は、実際に使用している車いすで確認することをおすすめします。車いすが入らない、天井に頭が当たるといった失敗を避けられます。
アフターサポートがあるか
福祉車両は、スロープやリフト、電動ウィンチ、車いす固定装置など、一般車にはない特殊な装置が多数あります。これらの装置は通常の整備士では対応できない場合が多く、専門の技術を持った整備士に点検を依頼する必要があります。販売店が修理や定期点検に対応しているか、同等の福祉車両の代車を用意しているかを、事前に確認しておくことが大切です。
自分に合った福祉車両を購入するために
福祉車両は見た目こそ一般車と似ていますが、移動に配慮が必要な方が快適に移動できるよう、特別な工夫が施されています。選ぶ際は、利用者の体の状態や将来の変化も考慮し、必要な装備を慎重に検討することが大切です。
購入時の負担を軽減するには、助成金や減税制度の活用がおすすめです。これらの制度は自治体によって内容が異なるため、専門知識のある販売店に相談すると安心です。福祉車両に詳しい販売店なら、装備の点検や安全確認に加え、複雑な手続きもサポートしてくれます。初めての方でも、安心して長く使える一台を選べるでしょう。