中古マンションの購入は、新築マンションとは異なる魅力と、知っておくべき特有の注意点があります。賢い選択をするためには、事前にしっかりと準備し、多角的な視点から物件を評価することが不可欠です。
この記事では、専門家としての知見に基づき、中古マンション購入で押さえておくべき重要ポイントを、わかりやすく解説します。ぜひ最後までご一読ください。
まず押さえておきたい基本事項
中古マンションの最大の魅力は、やはり価格の手頃さにあります。特に昔からある物件は良い立地にあることが多いというメリットもあります。
ただし現在の都市部(例えば東京や福岡の中心部)では、駅に近い場所や人気の学校区内など立地の良いマンションは、築年数が経っていても新築時以上の価格で取引されるケースが見られます。
都市部の新築は価格が高騰
現在、都市部の新築マンション価格は、坪単価500万円以上が当たり前となっており、2LDK〜3LDKタイプ(約20坪)の部屋でも物件価格が1億円を超える、いわゆる「億ション」が増えています。
これでは、一般的な会社員の年収では、住宅ローンの返済比率(20〜25%以内)を満たすのが難しい状況です。そのため、「割安な中古マンション」が現実的な選択肢となりますが、近年は中古マンションの買取り再販を行う不動産会社の参入が増え、競争が激しくなっています。
結果として、個人間の仲介物件など、お手頃な価格の中古物件情報が以前より少なくなっている傾向にあります(リフォーム・リノベーション済みの業者売主物件が増加しています)。
見落としがちなポイント
中古マンション購入で特に見落としがちなのが、住宅ローンの「耐用年数制限」です。戸建てとは異なり、マンションの土地は区分所有者全員の共有となるため、土地そのものの担保価値は限定的です。
そのため、建物の耐用年数(一般的に55年程度)から築年数を引いた期間が、住宅ローンを組める最長期間となります。
例えば築30年(1995年以前の物件)のマンションであれば、最長でも25年程度の住宅ローンしか組めない計算になりますので毎月の返済額が増えます。このようなケースになるため注意が必要です。
見逃せない「立地」のチェックポイント

マンション選びで「立地」は最も重要な要素の一つです。中古マンションは、新築マンションと比べて、すでにインフラが整った良い立地で見つかる可能性が高いという利点があります。具体的に確認すべきポイントは以下の通りです。
通勤・通学の便利さ
職場や学校へのアクセスが良いか、公共交通機関の利便性や所要時間をしっかり確認しましょう。
周辺施設の充実度
日常生活に欠かせないスーパー、コンビニ、病院、公園、銀行などが徒歩圏内にあるかを確認します。お子さんがいるご家庭では、保育園や学校の評判、通学路の安全性も重要です。
建物の状態と管理状況を見極めるコツ

築年数や建物の状態、そして管理状況は、購入後の安心感や将来的な資産価値に大きく影響します。
築年数と建物の状態チェック
まず外観の劣化状況や室内設備の老朽化が、基本的な判断基準になります。
特に重要なのは、建物が「いつ建てられたか」という時期です。「新耐震基準」(1981年6月1日以降)に建築確認申請を受けて建てられた物件かどうかを必ず確認しましょう。
それ以前に建築確認申請を受けて建てられた「旧耐震基準」の建物は、阪神淡路大震災クラスの地震に対応できない可能性があるとされています。たとえ物件価格が安くても、1981年5月以前に建築されたマンションは、将来の大規模修繕で「耐震補強工事」が必要となり、予期せぬ大きな費用がかかる可能性**があるため、十分な注意が必要です。
管理状況の確認
中古マンション選びでは、「管理組合がしっかり機能しているか」が非常に重要です。築年数の古いマンションは、管理組合の歴史も長いため、管理体制がしっかりしているケースが多いという利点もあります。
また、「修繕積立金の状況」も必ず確認が必要です。マンションを長く良好な状態に保つためには、適切な大規模修繕工事が不可欠であり、その費用は修繕積立金から賄われます。
築年数の古いマンションでは、すでに大規模修繕を経験しており、修繕積立金が月額10,000円以上になっているケースも多く見られますので、必ず確認しましょう。修繕積立金の総額は管理組合の定期総会で報告されるため、区分所有者であれば知ることができます。
購入前に外部から調査する場合は、不動産会社を通じて「重要事項に係る調査報告書」を管理組合または管理委託会社に請求する*必要があります。中には修繕積立金の積み立てがほとんどできていない管理組合も存在しますので、購入前には必ずその状況を確認しておくことが賢明です。
購入時の費用面で注意すべきポイント

中古マンション購入時には、物件価格以外にも様々な費用が発生します。これらの見落としがちな費用を事前に把握し、資金計画にしっかり含めておくことが重要です。
主な初期費用としては、以下のようなものがあります。
- 仲介手数料:不動産会社に支払う費用
- 登記費用、印紙税、不動産取得税などの税金
- 住宅ローン契約に関する諸費用(保証料、事務手数料など)
- 火災保険料
- 引っ越し費用など
次に、購入後も継続的にかかる費用は以下のようなものがあります。
- 毎月の管理費と修繕積立金
- 固定資産税などの税金
マンションの購入後は、月々の住宅ローン返済額に加えて、毎月の管理費と修繕積立金の支払いが必ず発生します。これらはマンションを維持管理するために不可欠な費用です。さらに、固定資産税などの税金も毎年負担となります。
これらの「継続費用」も考慮に入れ、月々の支払いが無理のない範囲であるか、しっかりと資金計画を立てる必要があります。中古マンションに限らず、住宅を購入する際は、無理のない予算で計画を立てることが最も大切です。
トラブルを防ぐための購入前準備
安心して中古マンションを購入するためには、信頼できる専門家を選び、契約内容を十分に理解することが不可欠です。
信頼できる不動産会社や売主を選ぶ
不動産会社を選ぶ際は、その会社の過去の実績や口コミを調べることが有効です。複数の不動産会社と相談し、比較検討することをお勧めします。
契約時の注意点
契約時で最も重要なのは、「重要事項説明書」で特に確認すべき項目を把握することです。これは不動産の専門家から物件に関する重要な情報や法的制限、契約条件などについて説明を受ける書類です。
初心者には分かりにくい内容も含まれていることがあるため、不明な点があれば、納得できるまで質問することが大切です。
また、前述した修繕積立金の状況を確認するためには、不動産会社を通じて「重要事項に係る調査報告書」を管理組合または管理委託会社に請求する必要があります。この報告書は、物件の管理状況を詳細に把握するための貴重な資料となります。
大きな買い物だからこそ事前準備を大切に
中古マンションの購入は、多くの方にとって一生に一度の大きな買い物です。ご紹介したチェックポイントを参考に、慎重かつ計画的に進めることで、理想の住まいを見つけられるでしょう。